物事には必ず終わりがある
命でも、仕事でも、恋愛でも
そんなのはじめから分かってたことなのに
やっぱり未練や後悔があるのは、当たり前のことを忘れてしまうぐらい彼に夢中だったんだなぁと思う



一般人だった
こんな世界にいる私を大切に思ってくれていたし、私も彼を大切に思っていた
人を殺すことを業とする私に、こんな幸せな時間があっていいのかなって
普通の人生を送っていたら、きっとこうやって誰かを愛し、愛されていくものなんだ
私が知りえない、当たり前の幸せを彼は教えてくれた
私は彼に何かを与えることができたのかな
何か一つでもこの愛情に応えることができていたのかな





「ごめんね、私なんかを好きになってくれたばっかりに……」



ボンゴレの、しかもヴァリアーの一員と関係があるというのは敵対マフィアにとって恰好の餌食だったんだと思う



「本当にありがとう。あなたが居てくれて私は幸せだったよ。」
「できればあなたも幸せにできればよかったな。」



血まみれの部屋に横たわっている彼に最後のあいさつを済ませると外で気だるそうに待っている後輩と目が合う


「ここまで付いてこなくっていいのに。」
「そんなこと言わないでくださいー。ミーだって先輩のそんな姿みたくないですから」
可愛くない、カエル姿の後輩
こんな時は一人でいたいのに
「私だってこんな姿、誰にも見られたくない」
少しは感傷に浸りたい
大切な人を失うことは初めてではない
だからといって決して慣れるものでもない
「だから先に帰って、って言ったんだけど」




フランとは、先程までの任務で一緒だった
Aランクの任務だったが、思ったより早く終わったためゆっくりと帰ろうかと思っていた矢先、いつの間にか携帯に入っていた連絡に気がついた
それがコレだ


「先帰れって言われても、あんな顔した先輩をみて一人にできるほどミーはろくでなしじゃないですー」
どんなに酷な任務でもいつも表情を崩さない先輩が、泣きそうな顔をしていた
それだけで一大事だった
だから後を追いかけてみたら、こんな状況で
「はは、そんな酷い顔してた?」
そうやってまた泣きそうな顔で無理して微笑む
「先輩のその顔、ミーは嫌いですー」
そういって先輩の腕を引っ張り、自分の腕の中に引き込む
「悲しい時は泣きなさい、って教わりませんでしたかー?」
驚いたように、眼を一瞬見開いて、でもその表情はすぐに崩れて
「ありがとう、フラン」と小さい声とすすり泣く声が聞こえてきた
任務は完璧にこなして、みんなに優しくて、笑った顔も怒った顔も可愛くて
でも人に甘えることができない、そんな不器用なところも好きで
ずっと見ていた
「先輩、もうこんな悲しい思いをしないようにミーにしませんか?」
「へ?」
「ミーなら先輩をおいて先に死んだりなんかしませんから。」
真っ赤になった目が合う。
「だからー、ミーは先輩が好きですーって話ですー」




キミに降りかかる悲しみは、すべて消してあげる
だから貴方のすべてをください




(まぁこんなことがなくても先輩はミーのものにしますけどねー)
(とりあえず、目が真っ赤な先輩もかわいいですねー)