あー…暇だ。
1週間ぶりに任務から帰ってきて、今日は珍しくオフだから談話室でダラダラと過ごしていた。
隣には同期のがいて、なんだか難しそうな分厚い本を読んでいる。
本なんか読んでないで、こっち向けばいいのに。
久しぶりに休みが一緒なのに王子をそっちのけでさっきからずっと本に夢中だ。
こっち向け、こっち向け。本なんか見てないでさ、おれの方を見てくれればいいのに。
を見ながらそんなことを念じてればふと見慣れないものが目に付いた。
「なんで、指輪なんかしてんの?」
彼女の薬指にはピンクゴールドのかわいらしい指輪が嵌まっている。
ついこの前まではしていなかったと思うが、任務から帰ってきてみればそんなものを付けている。
には彼氏はいないはずだ。
「あぁ、これね。プレゼントされたの。」
そう言って手を顔の横まで持ってくる。
にっこりと笑いながら。
「……誰にもらったの?」
なんかムカつく。なにニヤニヤしてんの。
王子以外の男からプレゼント、しかも指輪なんかもらって嬉しそうにしやがって。
「ん〜、内緒。」
うわ、内緒とかなんだし。
のくせに指輪とか生意気。」
ムカつくからの指から指輪を奪ってやった。
「ちょっとベル。何すんのよ。」
ぶー、とほっぺを膨らませる。
バーカ、そんなの全然怖くねぇし。
奪った指輪を自分の指に嵌めてみる。
こうやってみるとの指の細さに気づく。俺の指も決して太くはないけど、小指の途中までしか入らない。
こんな細い指してるのに、殺しのときは信じられないくらいの力を持ってるんだから女ってのは怖いもんだ。
「ねぇ、ベル返してよ。」
そういって人の手を握ってくる。
「誰にもらったか言うまで絶対渡さねぇよ。」
まぁ教えてもらったところで返さねぇけど。
ほかの男から貰った指輪なんて着けさせておく訳ないじゃん。
それでも「言いたくない。」とか言ってくるんだから王子的にとっても面白くないわけで。
手を握ってきたの手を握り返し、
「じゃあさ、俺にキスしてくれたら考えてあげる。」
意地の悪そうな顔をしてるんだろうな、と自分でもわかるくらいの笑顔でこう言ってやる。
すると耳まで真っ赤にする君が見れるから。
「ベルの馬鹿。」
そうやって悪態ついて下を向く。
本当にいつまでも変わらないを見ると安心する。
「ねぇ、。」
下を向いているの顎を持ち上げ視線を上げさせる。
頬を真っ赤にして、目を合わせようとしない。
一向に口を割らないに痺れを切らし、唇の真横にキスを落とす。
「誰からもらったの?には王子がいるのにさ。」
別に俺はこいつの彼氏でもないから、そんな権限はないけど。
でも、の隣にいるのは俺しかいないから。
他の男から貰った指輪で嬉しそうに笑う姿なんて見たくない。
は王子のものだろ?」
人のものになるなんて、絶対にさせない。
「……ベルの、馬鹿。」
小さい声で、絞り出すように話し出す。
「この前買い物に行ったときに、この指輪見てたらルッスが買ってくれたの。」
この指輪、王冠をモチーフにしてるからベルのティアラと似てるでしょ?
そう言って愛しそうに指輪をさする。
こいつ可愛過ぎ。
今にも爆発しそうなくらい真っ赤なを抱きしめてやる。
の馬鹿。そんなことなら内緒にすることないじゃん。」
あー、もう。王子ってばあのオカマに嫉妬してたわけ。
しかもプレゼントって言っても贈られたものじゃなくて、が選んだものを買ってもらったっていうだけのことだったのか。
マジカッコわりぃ。
「だってこれ言ったらベルは絶対に馬鹿にするでしょ?」
「バーカ。最高の口説き文句なんだけど。」
そして今度は唇にキスを落とす。









指輪









(俺がちゃんとした指輪かってやるから)
(だからこの指輪はいらないだろ?)
(オカマからでも、他の男からの物なんて身につけさせねぇから)