合宿2日目の夜のこと。





今日の夕ごはんも美味しかったなぁ……
もうお風呂にも入ったし、あとは寝るだけか。
今日は疲れたし、早く寝よう
なんて考えてたら後ろから急に声をかけられた。
ちゃん発見!これからみんなで集まるんだけど、ちゃんも親睦を兼ねて一緒にゲームしよう。」
「あー…誠二か。ごめん、疲れてるからパスで。」
「えーそんなこと言わないで、ちょっとだけでいいからさ。お願い。」
抵抗するも関係なしに部屋へ引っ張られる。
部屋の中には間宮、若菜、鳴海、設楽、上原、桜庭で,もうゲームが始まっていた。
ベッドには三上が迷惑な顔をしてに横になっている。ちなみに渋沢もいるが、周りで騒いでいることを全く気にすることなく読書している。
「ちなみに勝ったら良いように使っていいから。」
そう誠二に耳打ちされた。
なんだと?それはこいつらを好きに使っていいってこと??
昨日、今日とこいつらの汚れものを洗濯したり、ドリンクを作ったりと散々働かされている割には労いの言葉ももらっていなかった。
きっと目の前のサッカー馬鹿たちにはやってもらって当たり前のことなんだろうが、私は至って普通の中学生だ。しかも女子。
マネージャーも志願したわけでもなく、玲さんに言われたからやっているだけでこんなにたくさんの男の世話なんて誰が好き好んでやるものか。
たった2日間だが、私の中の積りに積もった小さな憤りが沸々と湧いてくる。
「よし、やってやろうじゃないの。」
誰を最初の餌食にしてやろうか。
「お、マネージャーちゃんじゃん。ゲームとかできるの?」
この、人を馬鹿にしている感じ。なんか癪に障る。
「できるよー。鳴海君だっけ?相手になってくれる?」
「喜んで。」
今やっているのは某レースゲーム。
絶対負けない。
(徹底的に勝って鬱憤を晴らしてやる。)










ちゃんって見かけに寄らず、すっごいゲーマー?」
鳴海をストレートで倒し、余裕のVサインを見せると拍手が起こった。
「ゲーマーじゃないけど、兄貴の影響でよくやってる。」
そんなに女子がゲームできることって珍しいのか?
なんだかみんなが珍しそうに見てくる。
「じゃあ次は俺とやろー」
若菜が立候補すると今まで黙っていた鳴海が
「いや、まだ俺は本気じゃなかった。もう一度俺とだ!」
と息を吹き返した。
……負けたなら潔く認めろよ。
「鳴海、メンドイ。」
冷めたような顔で設楽がボソッとつぶやく。
「負けたんだから、さっさとどけよ。唯でさえデカイんだから、邪魔。」
こ、こいつ翼さん並の毒舌だ。
さっきまで勢いがあった鳴海が一気に沈んでいくのが目に見えてわかる。
「すごいね、設楽君って。」
「兵助でいいよ。設楽君ってなんか暑苦しいし。」
「うん。じゃあ兵ちゃんで。」
やっぱり普段から一緒だから自然と対処方法が身についてるんだろうな。
きっと直樹とマサキみたいな関係なんだろう。
……なんか直樹が懐かしくなってきた。
「やっぱ明星コンビは面白いよなー。漫才っぽい。」
誠二たちもその様子を見て笑っている。
「やめろよ、鳴海とコンビとかキモイ。」
こうなると、少し鳴海も可哀想に思えてくるが仕方がない。
「じゃあ若菜君。やろうか。」
そう言って鳴海からコントローラーを奪い取って渡す。
「若菜君って俺も暑苦しいから、結人って呼んでよ。」
そう言ってコントローラーごと手を握ってきた。
「じゃあゲームで勝ったら考えてあげる。」
ピシっと叩いて、その手を征する。
「俺が勝ったら、って呼んでもいい?」
「どーぞ。」
こうして呼び方を賭けた戦いが始まった。















「嘘でしょー。こんなことってあるの?」
結局若菜には全く歯が立たず、ぼろ負けしてしまった。
もなかなかやるじゃん。でも相手が俺だったから、こんなもんでしょ。」
ニカっと笑いこちらに向けてVサインを見せてくる。
チクショー、真似しやがって。
「約束通り、俺のこと名前で呼んでね。」
「……考えるとは言ったけど、呼ぶとは約束してないもん。しかも私の名前で呼ぶことが約束だったじゃん。私、これから若菜君のこと尊敬の意をこめて若菜師匠ってよぶね。」
ちょっと悔しいから、名前でなんか呼んでやらない。
「じゃあもう一回やろう。それで呼んでもらう。」
「もう疲れたから私休憩するもん。」
別に名前で呼ぶことも呼ばれることも抵抗はないが、こうやって賭けの対象になるとつい意固地になってしまう。
えぇー、と口をとがらせている若菜を無視し、気だるそうにしている三上の元へ避難する。
「三上さん、助けて。」
「あ?んなことするか。」
ひどい。
「おい三上。そんな冷たいこというなよ、さんが可哀想だろう?」
今まで本を読んでいた渋沢さんが助け船を出してくれた。
「だったらお前が助けてやれよ。」
「三上さん、そんなに冷たくされると泣いちゃうかも。」
「勝手に泣いてろ。」
「うわーん。みかみんの馬鹿ぁ。」
「みかみんって呼ぶな。しかも泣くならちゃんと泣け。」
「……みかみんが慰めてくれるなら、ちゃんと泣く。」
あぁもう、と髪の毛をクシャクシャと掻き揚げる三上はなんとも色っぽい。
その色気を分けてほしかった。
「はいはい、可哀想でちゅねー。馬鹿は早く寝ろ。」
「キモイし、私馬鹿じゃないし。」
赤ちゃん言葉のみかみんキモ過ぎ。
なんか鳥肌立ってきた。
「お前慰めろって言っておいて、その態度は何だ。」
眉間にしわを寄せて面倒そうな顔をする。
みかみんって反応面白いなぁ。面倒くさそうにしてるけど、実際構ってくれる。
きっと後輩を邪険にできないのね。多分彼は優しい心の持ち主でしょう。



「そんなに暇なら、俺が遊んであげるって。」
「いや、若菜師匠とは恐れ多すぎて遊べません。同じ空気をすっていること自体、息苦しいくらいです。むしろ強要されたらパワハラで訴えますよ。」
「なぁ、それって普通セクハラじゃないのか?」
あ、そうか。
「みかみんって冷静だね。」
「うるせー。」
「やっぱりみかみんと遊ぶ。」
「やっぱりってなんだし。」
そんなこんなで、合宿2日目の夜は更けていきました。







(確実に寝不足だわ。)
(今日の収穫はみかみんの優しさだね。)


なんだかんだで、まとまりのない終わり方になってしまった
ただ三上と絡みたかったってゆう魂胆でした←