胸キュンってこうゆうことを言うんだと思う。
3
抽選会はクジも引かせてもらえず、ただ監督と翼さんの後ろについて回るだけでした。
やっぱりクジ引きたかったなぁ。
予選であたる学校はずば抜けているところはいなそうだから、きっと問題ないだろう。
そして今日は約束通り、翼さん、マサキ、五助、六助、直樹とともにフットサルに来ています。
「けっこうたくさんの人が来てるんだね。」
思いのほかにぎわっているフットサル場。
なんだかワクワクしてきた。
いつもは雑用ばっかりで、ボールに触れることなんてほとんどないから楽しくって仕方ない。
「向こうの学校ではサッカーしてなかったんだもんな。」
「そうだよー。体育でちょっとやったくらいだったから身体も鈍っちゃうよね。」
小学校の時からお兄ちゃんのクラブについていって、一緒にサッカーをしていたからみんなほどではないけれどそれなりにサッカーはできるつもりだ。
久しぶりの運動は楽しいが、問題は体力が持たない。
「次のゲームは私見てまーす。」
「やっと俺の出番やな。」
ちなみに私がゲームに出るときは直樹が出られない。
「お待たせしましたー。あとは頼んだぞ。」
まかせとけって、満面の笑み。今日初めてのゲームだもんね。ごめん、直樹。
喉も渇いたし、ジュースでも買ってこようかな。
「翼さん、喉渇きません?」
「あぁ、渇いたね。飲み物でも買ってきてくれるの?気がきくね。」
……私の企みがこんなにも早くばれるなんて。
いや、決して翼さんに飲み物をご馳走してもらおうなんて図々しいこと、これっぽっちも考えてませんから。
ほんの少し、ほんの少しだけ魔がさしただけですから。
「買ってきますよーだ。」
確か自販機が向こうにあったし、行ってくるか。
「ポカリとかでいっか。」
人数分のスポーツドリンクやお茶を買うと手がいっぱいだ。
マサキか直樹連れてくるべきだったなぁ。意外と重いよね、飲み物って。
「大丈夫ですか?」
あぁ、こんなところに優しい人もいるんだ。
「ありがとうございます。大丈夫です、きっと……ってアレ?」
声の聞こえる方へ顔を上げると、そこには見知った顔。
「スガさんじゃないですか」
「あれ、さんじゃないですか。奇遇ですね。今はこの辺りに住んでるんですか?」
「実はつい最近、飛葉中の近くに引っ越してきたんですよ。」
彼は須釜さん。いとこの圭介の友達で、何度か会ったことがある。
まさかこんな所で会うなんて。
「ケースケ君は何も教えてくれないから知りませんでしたよ。お兄さんも元気ですか?」
「おかげさまで、相変わらずですよ。」
なんだか懐かしい顔に会うもんだなぁ。
「あ、待たせてるんですみません」
「気をつけてくださいね。」
……相変わらずさんも変わりないようで。
翼さんを待たせていることをすっかり忘れてた。
スガさん、相変わらずでかかったなぁ。
飲み物を落とさないように、なるべく早く戻るように小走りにコートへ戻ると―――
喧嘩?かしら。
翼さんのマシンガントークが聞こえる。
相手はこの前の試合で当たった相手校のFW。
可哀想に、あんなマシンガントーク浴びせられたら私ですら立ち直れないよ。
なんだか成り行きでゲームすることになってるし。
よくわからないけど、相手の女の子めっちゃ可愛いし。
マサキに状況を確認すると、偵察に来ていた次の試合相手の桜上水の人たちと国部二中のFW君とゲームをすることになったとのこと。
「、遅い。飲み物買うのにどれだけ時間かかってるわけ?」
「すいません、ちょっと何にするか決められなくて……」
知り合いとあって話し込んだなんて言ったら怒られそうな気がして、とりあえず嘘をついてみた。
なんだか翼さんは楽しそうで、あぁそうだったのなんて特に突っ込むこともなく飲み物を受け取ってくれた。
「翼さん、なんでそんなに楽しそうなんですか?」
「サッカーできるってことは、俺にとって最高に楽しいことなんだよ。」
そう話す翼さんはキラキラしていて、不覚にもときめいてしまった。
(ヤバい、可愛いはずの翼さんがカッコよく見えてきた)
「……なんか失礼なこと考えてるだろ?」
感の良い翼さんに殴られたのは、そのすぐ後のこと。
カッコいいなんて思ったことは秘密の方向で。