マネージャーってとっても大変です。
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ドリンク作ったり、ビブス洗濯したり、部日誌書いたり……
マネージャーってもっと大切にされて、選手の応援してるものだと思っていたよ。
現実はただの雑用係だったのね。
サッカー部のマネージャーになって早3日。もう挫けそうです。
何より翼さんは恐ろしいし、西園寺監督はもっと恐ろしいし、マサキは助けてくれないし。
クラスの友達からは羨ましがられたが、汗臭い中、泥だらけになって雑用をこなすことはとてもじゃないがしんどい。
「誰か南を甲子園に連れて行ってくれないかなぁ…」
どうせならどこかの漫画のヒロインみたいな夢を見てみたい。
「馬鹿。国立の間違いだろ。しかも南って笑えない」
急に声をかけられて現実に引き戻される。
「おぉ、翼さんか。ドリンクなら向こうにできてますよ」
わざわざこっちに来るなんて何かの催促だろう。
さすがに3日もいると少しずつわかってくる。
「もっと可愛い反応ができないわけ?」
「これが目一杯ですー。で、どうしたんですか?」
「明日、抽選会なんだけどお前も一緒に来い。」
抽選会って…
「もしかして私がクジ引いちゃうとか?」
馬鹿、と一発叩かれる。
「翼さん、あんまり叩かれると私の数少ない脳細胞が破壊されちゃう。どうにかなったら責任とってくれるんですかぁ」
「僕が叩く前からどうにかなってるから大丈夫だよ。」
さらっと失礼なことをいいやがった。
ムスっとしてると頬をつねられた。
「そんな顔してると、不細工になるよ。」
そう言いながら綺麗に笑う翼さんに思わず見とれてしまった。
あぁ、なんでこんなに綺麗で可愛いのに中身が鬼なんだろう……
考えていることが顔に出たらしい。翼さんの表情が変わった。
「あ!私、洗濯物取り込まなくちゃ」
とりあえず退散だ、退散。もう殴られたくはない。
気がつけばもう部活も終了時間になり、下校時刻になる。
帰りはサッカー部の人達と一緒に帰っている。
話題はサッカーのことから間近に迫ってきている定期テストの話になる。
「あかん。なんにも勉強してへん。」
「なに今更言ってるんだよ。」
「マサキかて何もやってないんやろ?」
「俺はコイツがいるから大丈夫だし。」
と肩をたたかれる。
「いい加減、自分で勉強しろ。」
テスト前になるとマサキとの勉強会は恒例行事。
マサキはやればできるのに、ギリギリまでやらない。直前になり最低限を勉強し、それなりにやり過している。
ちゃんと授業受けるだけでもっと点数取れるのにもったいないよなぁ。
「ふーん。って勉強できるの?」
「普段はアンポンタンだけど、集中するとコイツすごいから。」
「ちょっ、マサキ、アンポンタンって失礼だから」
そりゃ自分でもちょっと抜けてるところはあるとは思ってるけど、アンポンタンまではいかないでしょ。
そんな失礼なこと言うと教えてあげないんだから。
「……覚えとけ、マサキ。」
「悪ぃって。これやるから機嫌なおせよ。」
ぽいっと投げられたアメを受け取る。
あ、私の好きなアメ。
こういうことをサラッとしてしまうマサキはやっぱりいい男だ。
「しかたないなぁ、今度いつものケーキね」
「オッス」
勉強を教えるときは必ず私の好きなケーキを用意してくれる。
そうやって良いように使われている気がするけど、まぁいいか。
「じゃあ翼さんは私に勉強教えてくださいよ。たまには誰かに教わりたい」
「僕が?高いよ?」
その笑顔が怖いです。
「……期待に応えられそうにないので、やっぱりいいです。」
「遠慮しなくていいよ。どうせテスト前で休部になるからみんなで勉強会とフットサルやろうかと思ってたし。」
フットサル?
「私もやりたい!!」
別にサッカーができるわけではないけど、兄の影響で昔からサッカーは好きだった。
「じゃあ決まりね。」
楽しみだな、フットサル。