1年ぶりに戻ってきた学校。
この1年間は私にとってとても濃密な1年だった。
あの人との出会いはこの先一生忘れないだろう。あれは確かに私の初恋だった。
1
「久しぶりじゃん。」
懐かしいこの声は
「マサキ?」
「正解。さっそくサボっていいのかよ」
今は授業中。ちょっと気分が乗らないから、仮病をつかって屋上にきていた。
「そんなマサキこそサボってるんじゃないわよ。今勉強しないでいつするの?」
そんな時間ねぇよ、と笑う彼を見てとても懐かしい気持ちになる。
親の仕事の関係で、私はこの1年間他の中学校に転校していた。そしてまた、この飛葉中に戻ってきた。
マサキとは幼なじみで、小さい頃からずっと一緒にいた。
「相変わらずマイペースなところは変わらないな。」
「私だって変わったよぉ。この1年で少しは大人になりました。」
「全くわからねぇな。」
全くな、と強調してくる彼を軽く睨む。
昔はこんな失礼なことを言う子じゃなかったのに……
「この1年で俺も変わった。今、サッカーやってんだよ。」
「すごいじゃん。何があったの?」
「椎名翼ってゆうかなりのキレ者がサッカー部を作ってくれたんだ。あの麻城中から来んだとよ。今日暇なら練習見に来いよ。」
暇な私には断る理由もなかった。
そうして放課後、私はサッカー部の練習に見に行くこととなった。
そして放課後―――
「綺麗な子がいる。しかも監督さんもめっちゃ美人じゃん。」
今のサッカー部は男女混合なのか。こんな綺麗な人たちにかこまれてサッカーできるなんてマサキも幸せ者だよ。
「おぉー、じゃん。まさか俺のサッカーしている所を見に来たのか。」
「うわぁー久しぶり。直樹だぁ…って別に直樹を見に来たんじゃなくて、マサキに誘われたから覗きにきたの。」
たった1年会わなかっただけなのに、何もかもが懐かしい。
「まったくアンタも変わってなくてお母さんは嬉しいわ。」
「は会わない内に一段とおかしくなったなぁ。頭でも打ったのか?それよりもいい加減俺の方が年上なんだから少しは敬え。」
ケラケラと笑いやがって。本当に失礼な男だ。
「そう言えばサッカー部って男女混合なの?」
「は?男だけだけど。」
「だってあそこに綺麗な子がいるじゃん。」
「あれは……あ、俺もう練習いくわ」
そそくさと行ってしまう直樹。
なんなんだろう?
じっと綺麗な子を見ているとマサキが寄ってきた。
「そんなところで観てないで、もっとこっち来い。それとうちのキャプテンがジロジロ見るな、だとよ。」
キャプテン……?
あの女の子はキャプテンなのか。
「ねぇマサキ。サッカーってゆうから普通のサッカー部だと思ってたんだけど、まさか女子サッカー部だとは思わなかったよ。」
その一言にマサキは目を大きく開けてブッと噴き出した。
「お前、それをあっちに行って言うなよ?容赦ないから。」
「へ?どうゆう意味?」
「あれは男。」
男?あの綺麗な子が……
「ウソ!!」
バチーン!
嘘と言ったその瞬間に頭上に重たい衝撃が走った。
「嘘じゃないよ。」
痛みを堪えて見上げるとそこには綺麗な女の子……じゃなく男の子がいました。
「やっぱり可愛い。……痛っ」
もう一発殴られました。
隣にいるマサキはお腹を抱えて笑っているだけで助けてくれないし、ちっとも心配してくれないし。
「マサキ、これがお前が言ってた幼馴染?初対面なのにすっごく失礼なんだけど。」
「ちょっと失礼なのはそっちじゃない!仮にも女の子相手に殴るってどうゆうことよ。」
いきなり大きな声をだしたからか翼もマサキも驚いた表情でこっちを見て互いに目を合わせ笑い始めた。
「お前、おもしろいな。はじめただよ、僕に言い返してきた子は。」
「さすがだな。翼に負けてねぇよ。」
二人してゲラゲラ笑いやがって……
「なんかすごく気分悪いんだけど。何がそんなにおかしい訳?」
「翼に言い返すことができたのはお前がはじめてなんだとよ。みんな翼とお近づきになりたいから、良いことは言ってもお前みたいな口のきき方する奴はいないんだよ。」
「お前気に入った。サッカー部のマネージャー決定ね。ちょうど雑用係が欲しかったんだよ。」
「雑用係はやりたくない。」
「僕は3年の椎名翼。ここの部長だから、よろしくねマネージャー。」
「2年のです。ってマネージャー決定なの?そもそも3年生相手にため口きいちゃったよ。」
直樹にはあんな態度だけど上下関係とか意外と大切にしたいタイプだから……
「椎名先輩。どうぞよろしくおねがいします。」
とりあえず、今から敬語を使います。
「が敬語とかキモイ。」
マサキの馬鹿野郎。キモイとか言うな。
「敬語禁止。あと翼って呼んで。」
えっ…
「私、先輩相手に名前じゃ呼べないし、今から敬語使おうって決めた所なんですけど。」
バチッ
「いいから呼べ。」
一発殴られ、綺麗な笑顔で笑う椎名先輩は怖かった。
「じゃあ翼先輩。」
バチッ
「翼さんで勘弁してください。」
1日にこんなに殴られたのは生まれて初めてです。